あれから60年になるんだなー。大学に入って妙に気が合った。彼は会社の御曹司、俺はサラリーマンの長男ぼうで貧乏だった。1歳年上の彼は命令調だがよくかわいがってもらった。彼の会社の野球の試合にはよく誘われた。喜んで行った。野球よりも飯が食えたから。俺の社会人としての歴史は非常に破天荒だったのでいろいろ忠告をされたり心配された。時々会食を共にすることがあったが勘定はいつも彼だった。「お前と会うと金がかかってしょうがねー」といつも愚痴ってた。いつか俺がおごるから待っててねーと言うと彼はいつも信じられねー。やっと作ったものが売れるようになった。今年の3月会食の誘いの電話を会社に入れたら姪子さんが出て今年の正月に脳出血で倒れて意識不明だと言われた。コロナ禍で見舞いにも行けず訃報をもらった。生涯現役でいようと誓い合ったが先に逝かれてしまった。彼から受けた恩は一生忘れることはないだろうけどせめて一度でいいから会食で俺が勘定を払いたかった。悲しさというよりも悔しさだけが残った。悲しんでばかりはいられない。自分の感情とは関係なく仕事はどんどんやって来る。まだあなたのとこにはいかないよ。家族とついでに俺を見守っててね。